雨楽な家 URAC MODERN雨楽な家 URAC MODERN

雨楽な家BLOGBLOG

2022.11.09

自然石を踏みしめて歩きたい

杉木立の森の奥へとつづく石畳の道は、和歌山県の熊野古道。紀伊半島の南端にある熊野三山(熊野本宮大社、速玉大社、那智大社)と、大阪や伊勢などを結ぶ昔からの街道です。

紀伊山地の豊かな自然が織りなす景観は、世界的にも高い評価を受け、「紀伊山地の霊場と参詣道」として、2004年にユネスコの世界遺産に登録されました。

苔むした石畳が雨に濡れて輝いています。なぜ先人たちはこの街道に石を敷きつめたのか。紀伊は温暖で雨の多い地域。そのため、草が生い茂って道をふさがないように、そして、土砂が豪雨に流されないようにと、石を敷きつめて大切な街道を強固にしたと考えられています。

自然素材

 

自然素材

日本庭園や寺院などのアプローチには延段(のべだん)と呼ばれる敷石の道があります。長方形の切石や多様な形の自然石を寄せて敷いた短冊型の石敷きで、面白い造形美を魅せてくれます。

延段は庭の風景に趣や変化を与えるとともに、雨から足もとを守り歩きやすくするためのもの。切石や自然石が大胆な意匠で小気味よく組み合わされた延段の侘びた美しさは、日本固有の文化として海外からも注目されています。

延段は石の張り方により「真・行・草」の3種類に分けられます。真は長方形の切石を使用し端正を表現。草は自然石を自由自在に敷きつめ柔らかさを表現。行はその中間の味を表現します。

緑けむる雨上がり、石畳の道をそぞろ歩くのは気持ちいいものです。アスファルトやコンクリートの道では得られない自然素材の豊かな質感が足裏に伝わってきます。

 

鉄紺色の外壁カラーは浮世絵に見られる日本の伝統色。母なる海のような深い青が印象的なこちらの「雨楽な家」のお宅では、玄関アプローチに自然石を敷いて石畳を創りました。

自然石のアプローチは客人を招くウェルカムの思いを石でデザインしたもの。変化に富んだ造形美が楽しめます。苔や下草、植栽や木塀と一体となって、心をなごませてくれます。

石は石器時代から今に至るまで人々の暮らしに欠かせない大切な素材。とくに日本は火山国で、地表の3分の1をマグマが固まってできた火成岩に覆われた石の豊富な国です。

中でも御影石(花崗岩)は石材として多く使われます。雲母や石英など有色鉱物の結晶からなり、硬く美しく、磨くと良い光沢が出ます。切石としてアプローチにも用いられます。

自然素材

 

自然素材

こちらは「雨楽な家」の通り土間。奥に見える格子戸から手前の中庭へとつづき、光と風が通りぬけていきます。土間の仕上げは「豆砂利の洗い出し」。上品な味わいです。

昔から日本の住まいは農家でも町家でも、家の中は土間と板の間と座敷に三分割されていました。土間は暮らしに密着した活動的な空間として利用され、下足のままで自由に使えるスペースとして重宝されました。

最近は、土間を自分流に楽しみたい、という若い人たちが増えています。子どもの遊び場、愛犬の居場所、趣味のアトリエ、釣り道具の手入れなど、楽しみ方はいろいろ。

屋内にあっても屋外の作業ができる土間は、雨や雪の日にも助かります。床が豆砂利ですから、バイクや自転車のガレージ兼修理工場としても思いのままに使えます。

 

石は地球のかけら。まさに自然素材そのもの。自然界に存在するものは内に秘めたエネルギーを放出して、私たちを元気づけてくれるような気がします。自然石を踏みしめて歩きませんか。

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