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経年変化と日本人の美意識…味わい?汚れ?

経年変化・エイジングを楽しむ、育てる素材として思い浮かぶのは、レザー、真鍮などの金属、ラタン・竹や漆、無垢の木。リネンも使い込むことで柔らかくなり、デニムも古着市場を賑わせています。

 

土のぬくもりが魅力の「陶器」もそのひとつ。焼き物のうつわは日々の食卓で日常的に使っていると、その表情、景色が変化していきます。
たとえガラス質の釉薬が厚くかかっていても、貫入という釉薬のヒビやピンホールから水分が浸入、少しずつ着色が進み、味わい深く育っていく様子が楽しめます。

経年変化

なかでも、千利休がその魅力を見出したといわれている「粉引」のうつわは吸水しやすく、水分をいれるとみるみるうちに乾燥時には見えなかった貫入が現れ、そこから色の変化が一面に広がります。乾燥させると元の状態に戻ります。

 

たとえば粉引の酒器にお酒を注いで、その様子を鑑賞するのも乙なもの。

 

使い込むうちに染み込んだ成分が蓄積し、模様となって現れます。
その模様は愛着をもって「雨漏り」と呼ばれています。

 

このような経年変化を「味わい」として好ましく感じることができる美意識は、日本人独特の感性といえます。「汚れ」「劣化」と言ってしまうと身も蓋もありませんが、「見どころ」としてとらえることができたら、心豊かに暮らすことができますね。

経年変化
濃淡のある白い化粧土から素地の土の色が透けて見える粉引のうつわ

さて、ここまで日本人の美意識の高さを語ってきましたが…
うつわによっては、経年変化が起きてほしくない場合もあります。
好みの問題かと思いますが、私の場合、空色の化粧土がかかった陶器には
そのままの姿でいてほしい、と思うのです。

 

焼き物のうつわを使い始める際によくいわれているのが
米の研ぎ汁で煮沸し、目止めをすること。さらに
使う前にきれいな水に5~10分ひたす、揚げ物の下には懐紙を敷く。
これらの対策で着色汚れや油染みを防げます、ということ。

 

すべてを施しても変化を防げなかったことがありました。
特に油染みは最悪です。味わいどころか、汚れにしか見えません。

 

目止めに失敗した経験から、少しでも確実な対策を、とネットで調べたところ、「食器用止水剤」なるものがあることを知りました。いくつか種類がありましたが「液体セラミック」を試してみました。無色透明でほぼ無臭。陶器に染み込ませたあと水洗いし、乾燥させるだけ。これで貫入やピンホールが埋まり、汚れがつきにくくなるそうです。施したあとの見た目にはまったく変化なし。効果の程はまだ不明。時間をかけて検証します。

 

食器用とはいえ添加物を使うことと、変化ありきで作陶されているはずの作家さんの意図に反するかもしれない、との葛藤もありましたが、このうつわに関しては今の姿が最良!と心を決めました。何かしら対策法があるものだ、としみじみネット情報に感謝しています。

 

「味わい」と感じられる変化と「汚れ」としか感じられない変化。これは人それぞれに基準が異なるように思います。
私は私の基準で、エイジングとアンチエイジングを選択しながら、暮らしの道具を整えていきたいと思っています。

経年変化

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