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2025.07.02

ツバメの子育て

自然を楽しもうと、島根県の「隠岐の島」へ行きました。
放牧の馬が高原で一心に草を食べている姿が愛らしく、隠岐の伝統文化「牛突き」も迫力満点。
玉若酢命(たまわかすのみこと)神社に立つ「八百杉(やおすぎ)」という杉の大木に感動。樹高38mは10階建てのビルに相当。周囲約20m。樹齢は二千年を超えるといわれる、国の天然記念物です。

ツバメ

 

ツバメ

ツバメ

 

観光もいいけど、隠岐で強く心に残ったのは、ミニドーム球場みたいな
「牛突き」の会場のトイレで、ツバメが子育てに励んでいたこと。
トイレの個室の天井付近にツバメの巣があり、ヒナが顔を見せていました。
びっくりして写真を撮るのも忘れたのがザンネン!

 

里山も田畑も民家もたくさんある「隠岐の島」で、なぜツバメは
人の出入りの多い「牛突き」のドームのトイレで子育てするの?
というわけで、今回のテーマは、「ツバメの子育て」。

 

ツバメ

 

ツバメ

ツバメの子育てに関連して、感動的な話を聴きました。(写真はイメージです) 解体工事中の富山県の住宅の軒下で、4~5羽のヒナがかえったばかりのツバメの巣が見つかり、業者は巣を近くの建物に移せないかと、県の鳥獣保護センターに相談したところ、「人が巣を移すと親鳥が子育てを放棄する可能性がある」との助言を受け、そのうえ、「自治体の許可を受けずに卵やヒナを巣から移すことを『鳥獣保護法』が禁じている」ことを知ったそうです。

鳥獣保護法は人の都合で生き物を安易に殺さないために定められています。卵があったりヒナがいたりするツバメなどの巣の撤去が認められるのは、電線にあって火災や漏電の危険がある場合や、個人宅ではフン害や健康被害、その恐れがある場合などに限られ、自治体の許可が必要となり、違反すれば1年以下の拘禁刑、または100万円以下の罰金を科される恐れもあるとのこと。

業者は「人間の都合でツバメの命をむげにできない」と、依頼主や他の業者にも通知して、作業はヒナが巣立つまで約3週間延期することを決めました。さらに、センターの助言を参考に、ヒナをカラスなどの外敵から守るための囲いも設置し、ツバメの成長を見守ったそうです。感動的な話ですね。

ツバメは3月から4月にかけて、数千kmも離れた東南アジアなどから海を越え日本に渡ってきます。そして民家や施設の軒下などに泥や枯れ草でおわん型の巣を作って子育てし、9月から10月頃になると越冬のため再び南下します。主食はハエやアブ、トンボやハアリなどで、飛ぶ虫を飛翔しながら捕えます。

一番目の画像は、春に渡ってきたツバメ。子育てする場所を探しているのかな。二番目の画像は、田で巣の材料になる枯れ草や泥を見つくろっている様子。体の色は光沢のある黒で、腹は白く、額とノドが赤い。尾は長く二つに分かれ、オスの尾はメスより長いとか。全長は約17cm、翼を開いた長さは約32cm。ツバメは生まれた翌年から繁殖し、寿命は1年から2年未満です。

一般に野鳥は人目につかない所に巣を作り子育てしますが、ツバメだけは人がたくさん出入りする所に巣を作る数少ない貴重な存在。ツバメが人目につきやすい所に巣を作る理由は、カラスや蛇などの天敵から卵やヒナを守るため。人を信じ、人をボディガードにしているのです。そのため人家や商店の軒先、駅やショッピングモールなど、人が絶えず出入りする場所を選んで巣を作ります。人を信じて巣作りの場所を決めたのですから、ツバメの巣を取り壊すなど、もってのほかです。

ツバメ

 

ツバメ

ツバメ

 

ツバメ

ツバメは4月から6月にかけて卵を産みます。メスが卵を抱く期間は2週間ほど。かえったヒナは3週間ほどで親と同じくらいの大きさに成長し、飛べるようになるとか。その後、巣立ちますが、しばらくの間は巣に戻ってきて眠ります。

一番目の画像は、左のヒナの巣立ち後もえさを運ぶ右の親鳥。巣立ち後も親鳥と過ごし、親から飛び方やえさの獲り方などを学びます。巣立った若い鳥は集団でヨシ原などに「ねぐら」をとるようになり、夏の終わりから秋にかけて南下していきます。

二番目の画像は、隠岐の島町の伝統を伝える茅葺屋根の建物。県指定有形民俗文化財、『都万目(つばめ)の民家』です。〝つばめ〟は偶然で、隠岐の島町の都万目という地域にあった豪農屋敷の母屋を隠岐郷土館に移築したもの。江戸時代に建てられた隠岐の島町独特の建築様式を残す数少ない建物です。茅葺屋根の深い軒下はツバメが子育てするのに最適な環境だったのでは。

 

ツバメが家に巣を作ると「縁起がいい」と昔からいわれますが、その理由は2つあります。
1つ目は、ツバメは害虫を食べて豊作を招いてくれるので、農家の人がそう伝えてきたという説。
2つ目は、ツバメがカラスなどの外敵を避けるため、人の出入りの多い商店などを選んで
巣作りをするため、商売繁盛のシンボルとして歓迎されたという説。どちらも納得ですね。

 

近年はえさを獲る環境や巣作りに適した家屋が減り、都市部ではツバメの数も産卵やヒナの数も減少している
との調査結果もあります。鳥獣保護法を理解せずにツバメの巣を撤去してしまう事例も後を絶ちません。

 

ツバメは人を信じて人のもとに飛んでくるのですから、ツバメを刺激せず、穏やかな環境で
子育てを応援し、次の春にも日本の同じ地を訪れてくれるよう、温かく見守りたいものですね。

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